NHK 数学ミステリー白熱教室~ラングランズ・プログラムへの招待~12/4の第四回(最終回)「数学と物理学 驚異のつながり」を見た。
このシリーズも今夜で最終回。 では今日も速記メモで。
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透明な壁にP=NP?とナビエ・ストークス方程式が書いてあるのが楽しいいつもの紹介からスタート。
さて今日登場するフレンケルさんはやはり半袖の黒シャツ。
数学の異なる分野の間の隠された関係について話してきた。まとめてみよう。
ジグソーパズルを思い出してほしい。数学には異なる分野がある。
これまでに登場したのはまず数論、数の研究だ。
そして調和解析、楽器からの波やモジュラー形式などを紹介した。
それから幾何学についても話した。対称性を見た。
ロバートラングランズによって提唱されたラングランズプログラム。異なる分野を統一しようとする試みだ。この一連の予想は50年の間に拡張されてきた。
今回特に話をしたいのは、量子物理学とのつながりだ。
数学とは全く異なる、物理学の世界ともつながりがありうる。
それが、この10年の間に明らかになった最先端の研究だ。10年前に講義をしたらこれは取り上げられなかった。
さて、まずは、、、、
対称性について思い出してみよう。
対称性は一連の講義をつなぐ秘密の鍵だった。
最初は雪の結晶やボトルの回転などを議論した。幾何学の話だ。
数論における対称性についても話をした。ガロア群の話だ。
調和解析の対称性についても、志村・谷山・ヴェイユ予想について話した。
では量子物理学においてどのように対称性が現れる?
まず、対称性の概念がどのような役割を演じるか見てみよう。
原子からすべての物質ができていることをしっているね?そして原子核と電子も。
原子核は陽子と中性子からなることも知っているね?
炭素原子は陽子6個、中性子6個、電子6個だ。
陽子と中性子はさらに小さな粒子に分けられることが分かっている。
素粒子を見つけるには洗練されたマシンを使うことが重要だ。大型ハドロン衝突型加速器。国境をまたぐほど巨大なもの。スイスのジュネーブにある。
この100億ドルもする機械はある発見をもたらした。
ヒッグス粒子だ。標準理論に重要なものだ。
でも1960年代に時計の針を戻そう。
当時は小さな加速器を使っていた。バークレーの研究所でも素粒子だと考えられるものが次々見つかった。
しかし困った状況になった。あまりにたくさんの素粒子が存在したからだ。
一体誰がこんなにたくさんの粒子を注文したんだ、といった人もいた。(これはRabiさんです)
ところが数学の群を使って説明することができたのだ。
その理論の発展にマレー・ゲルマンが貢献した。
SU(3)という群を使ってハドロンの分類を行い、クォークの存在を
アップ・ダウン・ストレンジというものがあることを理論で示した。
クォークは整数ではなく、分数の電荷をもつ。これまで一度も観測されていないためありえないとも考えられた。
現在、陽子と中性子は3つのクォークから成り立っていることが分かっている。
アップクォークとダウンクォークを含んでいる。
SU(3)という群が重要だ。解説しよう。
我々は非常に重要な群を知っている。球の表面の回転の群だ。
バスケットボールを持ってきて、ある軸を選んで回転させる。
SO(3)という名前だ。
3次の特殊直交群。
SU(3)は特殊ユニタリー群。
我々の住んでいる3次元と複素数の違いだ。
複素数は2乗するとマイナス1になる数を含んでいる。
実は、数学者でさえも複素数を理解するのに何世紀もかかった。カルダーノという数学者は複素数のことを精神的拷問と呼んだ。
SU(3)は複素数を使った群だ。
球の回転と似ている。でもどうしてハドロンと関係する?
粒子がグループに分類できるということに物理学者が気づいた。
8個のグループを作れる。陽子、中性子とあと6個。
数学の本に載っている図と同じだとゲルマンが思った。ウエイトダイアグラムだ。
ゲルマンは同僚に見せてもらった図を見て、これはつながりがあると。
まるで探偵がやるような仕事だ。手がかりを見つけ犯人を逮捕する。
でも数学者は全く関係ないところでこの図を見つけていたのだ。
チェンニン・ヤンの言葉を紹介したい。
”これほどミステリアスで畏敬の念を起こさせる事実がほかにあるだろうか。物理世界の構造が論理と形式の美しさをもとに作り出された数学的概念と緊密に結びついているのだ”
ところでSU(3)からどのようにクォークが見つかったのか?3から3つのクォークが見つけられた。さらにあと3つの
アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、トップ、ボトムを加えて6つになる。
名前の由来は聞かないで、、、
ラングランズプログラムとのつながりは何だろうか?
標準理論について話そう。
様々なものがこれに基づいて見つかっている。
さて、自然界の力には
重力、電磁気力、弱い力、強い力
がある。
すべてのものを記述する式があったらつまらないと思う?
いや、たった一つの式で表すことはできないだろう。でも近づくことはできる。地平線のようなものだ。でも私は一つの式で表されるとは思っていない。あるエネルギー領域ならある。
でも別の領域では説明できない。
スーパーストリング理論もそうだ。私の仕事でもある。
まだ実験で実証されていないし、物理学と数学がせめぎあっている。
さて、標準理論が重要だと考えているのは、それがゲージ理論だからだ。
対称性の群に基づいて力の性質を説明する。
例えば電磁気力はU(1)という群を使っている。みんなが知っている群だ。
円だ。
弱い力はSU(2)、強い力はSU(3)。
電磁双対性について注目してほしい。
異なるゲージ理論の間につながりがある。
19世紀のマックスウェルにさかのぼる。マックスウェル方程式だ。
偏微分方程式だがエレガントでシンプルに見える。
電場と磁場の間に対称性が存在する。E→B、B→-E
ボルシチのレシピを使って説明した。
材料の交換を意味する。
ジャガイモ5つと玉ねぎ5つと書いてあったら材料を交換しても変わらない。
個数が違ったら味が変わる。。。
では他のゲージ理論にも電磁気力のような双対性があるのか?
電磁気力はEとBを交換しても方程式は変わらなかった。
ある群のゲージ理論は別のゲージ理論になる。
それが、ラングランズ双対群と呼ばれるものだった。
それでラングランズプログラムとゲージ理論につながりがあると考えられた。
一方にある群があって、他方に対応する別の群がある。
U(1)の双対群はU(1)だから電磁気力は変わらない。
SU(2)、SU(3)は双対群は同じにはならない。ここで詳しく説明することは骨が折れる、、、ので実演する。
美しいショーだと思うよ。
コップのトリックと呼ばれるものだ。
まずコップを掌に載せて、種も仕掛けもございません。
腕をねじってコップを360°回転させる。さらに回転させると腕がもっとねじれて病院送りになると思うでしょ??
いや元に戻った。
SO(3)の双対群はSU(2)になるんだ。コップトリックはそれをうまく表している。
SO(3)は空間の回転なので360°回すと、さらにSU(2)は720°回転させると元に戻る。
電磁気学のような双対性がU(1)以外にも存在すると予測されている。
SO(3)の双対はSU(2)のゲージ理論になる。
なぜ物理学にラングランズ双対群が現れるのか?
80年代になって認識された。70年代の終わりに複数の物理学者が研究していた。
ラングランズの業績については知らなかったがラングランズ双対群を研究していた。
その後25年間、答えが得られなかった。しかしフランケルさんもこの発見に関与した。
数学と物理学がつながっているのだ。
つながりとは?
2004年に決定的な出来事があった。
プリンストン高等研究所が舞台だ。
ある会議が開かれた。オーガナイザーの一人としてフレンケルさんも加わった。
数学者と物理学者が集まり、ひらめいたことを話し合った。
アプローチは本当の探偵のようなものだ。
物理学者であり、数学でも大きな功績があるエドワード・ウィッテンもオーガナイザーだった。
京都賞も受賞した。
彼はあるアイデアがある。それについて話をしよう、と3日目に行った。
ビデオや音声はないが、ノートは取ってある。彼は正しかった。
そして最初の論文を書いた。学会誌の丸々一冊になるほど長い論文。
そしてフレンケルさんを含む研究者たちが発展させた。
マトリョーシカのようなものだ。中を開けるとまた中に入っていて、、、という。
ヒントを示そうと思う。
3次方程式、y^2+y=x^3-x^2、素数pを法とする三次方程式の解の個数を数えよ、
というものを前回示した。
実数でも解を、複素数でも解を求めることができる。
同じ方程式の解を複素数でも求めることができる、というのが重要。
pを法とする場合はある調和解析の関数となるが、
複素数の場合は、ある幾何学の図形になる。それはトーラス。
それは分かれ道のようなものだ。
素数を法をしたら数論となり、複素数なら幾何学になる。
これこそがつながりだ。
幾何学もこのようにしてラングランズプログラムに含まれる。
ウィッテンと共同研究者がやったことは何か?
まずは数論から幾何学へ、次に幾何学から量子物理学へ、という2ステップで繋げた。
チェンニンヤンの言葉はすでに紹介した。
数学が現実世界とつながっている素晴らしいものだということ。
しかし数学でU(1)、SU(2)、SU(3)だけではない。どの群でも意味がある。物理学では自然界において見つけられるものだけが興味の対象になる。
数学と物理学にはすでに違いが存在する。これが一つ目の違い。
次に、数学の理論が物理学の発展に先立って行われたが、それが何かに関係するとは思われなかった。
数学者がどのように見つけたかは説明できるが、、、
でも数学を発見したのか、発明したのか?
ガロアの発見や志村・谷山・ヴェイユ予想は人類の金字塔というだけでなく、人類の高い志の賜物と言える。
数学についてよい話がある。
数学で生まれた偉業のすべてが我々の手から奪われることはない、というものだ。
最高裁がある判決を出した。数式で特許を取ることはできない。
E=mc^2で特許は取れない。
数学を共有することができ、それを奪うことはできない。研究をやめさせることはできない。
講義の終わりが近づいてきた。
最後に伝えたい言葉がある。
アイザック・ニュートンの言葉だ。
私は浜辺で遊ぶ子供のようだった。浜辺ですべすべした小石や美しい貝殻を拾って喜んでいた。
しかし私の目の前には真理の大海原が発見されることなく広がっていたのだ。
すばらしい生徒であってくれてありがとう。楽しい講義だった。
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第二回目はこちら:
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