#NHKスペシャル 12/10の「追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~」を観てます。速記メモ。
記者会見「22報論文の研究不正の申立てに関する調査報告」の実施について
15億円の予算が投じられていた。
今、研究不正の報告が日本で急増している。一体何が研究の現場で行われていた?
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東京大学。6人のノーベル賞受賞者を輩出している。
そこに名を連ねるのでは、と言われていた渡邊嘉典教授の論文に不正があったと調査委員会が発表した。
所属は分子細胞学研究所。生命科学の分野で世界トップレベルと言われている。
高校の生物の教科書にもその成果、シュゴシンと呼ばれるタンパク質の発見が記載されている。
細胞が分裂する際に重要な役割を果たす。細胞の情報が正しく複製されるようにする。
この研究で42歳で東大の教授になった。
研究室の元メンバーは、とても優秀で、スタッフや学生に対する期待も大きく、指導はかなり厳しかった、という。
シュゴシンで数々の賞を受賞した。
しかし、今年8月、調査委員会は不正行為があり、不適切な加工が常態化していたと発表した。
5本、16か所のデータに不正があると認定された。サイエンスにのった2015年の論文が最も不正が多かった。シュゴシンとがんの関係を示していた。
染色体異常なしとありの画像。
元のデータは何も変化なかったのに、画像処理で赤と緑の色を付け加えた。
さらに試薬の性能を示した画像。反応が3つあることを示していたが、元の画像は4つあった。
元の画像のコントラストを調整していた。
実験者が望む恣意的な結論を導いていて、科学的な正しさが確保されていないとの結論。
元メンバーは、教授から画像加工を支持されたことがあると語る。
隣に座って補正をしているのを見たことがある。
「これでいいんだ」とやり込められた。国際的にはこれで正しいと言いくるめられた。
渡邊研究室は3つの分野があり、お互いに成果を競い合っていた。
メンバーが加工した画像に教授がさらに手を加えたこともある。
画像の加工は積極的に行わなければならない、という教育をしていたと。
大阪大学の篠原彰教授。倫理委員を務めている。
研究者としてはリスペクトしていたと語る。
加工には一定のルールがある。背景に隠れて見えないものを明るくして見えるようにしたのはいいが、もともとあったものを消すようなものはダメ。
無かったものが見えてきたりあったものを消すのはだめ。
論文が問題なく通っていて、彼の中で感覚が麻痺してしまった。
科学者として非常に残念な対応だと篠原教授は語る。
NHKで渡邊教授に尋ねた。回答は、
私自身の認識不足、ミスがあったのは事実だが、客観的なデータに基づいている、とのこと。
研究不正が相次いでいる。
2000年まではほとんど報告されていなかった。2006年、東大工学部で不正が発覚。教授と助手が懲戒解雇された。
2014年には32人にのぼった。11人が不正に関与したとされた。STAP細胞の問題もこの年発覚。
さらに高血圧の治療薬のデータの改ざんも明らかに。
背景に国の科学政策の変化があると語るのは黒木登志夫さん。
科学の分野にも競争原理を取りいれた。
2004年には大学の運営費は1兆2400億円だった。研究者にはここから配分されていた。
今は1500億円削減されている。不足を補うには競争的資金を得なければならない。
山中伸弥教授のiPS細胞の研究には60億円が投入された。
量子コンピュータのプロジェクトには32億円。
一方、こうした競争が研究者に大きな影を落としている。
4割以上が資金不足で研究継続が困難。私財を投入する例もある。
競争が発展の原動力であるのは疑いないが、あまり強調されすぎていて、それが重要な間違いにつながることになる、と黒木さんが語る。
去年、教授に就任した東大の堀昌平さん。
免疫細胞の研究をしているが、日々の実験には多くの資金が必要になる。
細胞を扱う装置は120万円。実験に使う試薬は4、5万円する。年間700~800万円。
マウスに300万円。
全部で年1470万円くらいかかる。
大学からは360万円しかこない、、、競争的資金が必須。
研究資金のプレッシャーが半端ない。命がけだ、胃が痛くなるという堀さん。
渡邊研の元メンバーは強いプレッシャーを受ける時期があったと語る。
大型の予算を申請する時期など。みんなにはっぱをかけていた。
特別推進研究を13年間にわたって獲得し続けていた。
2005年から3.8億円。さらに2009年から3.8億円。つぎつぎに何本もの論文を出した。
2013年、シュゴシンとがんとの関係性で 5.4億円を獲得した。
2015年、がんとの関係性が見つかったとする論文を出した。これが不正認定された論文の一つ。
論文掲載を特に急いでいたようだと元メンバーは語った。
研究資金獲得の手段として重視していたものがある。
戦略的に論文を出す雑誌を選んでいた。nature, cell, scienceを重視していた。
シュゴシンとがんの関係を出したのもscience。
インパクトファクター(雑誌の格付け)が高い。
全雑誌の平均は2.18。
有名雑誌では30~40に達する。Natureは40.137.
渡邊氏は13年間で16本が有名雑誌に掲載されたが、それに不正が発覚した。
NHKの問いにプレッシャーは感じていなかったと渡邊氏は語る。
研究資金配分にも大きな問題がある。
日本学術振興会が決めているが、審査の内実を石井優教授(大阪大学)が語る。
学術振興会からの依頼で審査に携わってきたが、申請書に対して点数をつける。
年間10万件の申請書があって、採点される。
合計点などを基に、誰にどれだけ配分するか決める。
最先端の内容でもあり、1件に2時間もかける。2週間で100件も読み込む。
通常業務に加えてなので非常に大変。
専門外のものも審査することがある。研究者の業績欄を参考にする。
どの雑誌に載っているか?など。審査する内容が専門でない場合、雑誌の質で判断してしまうことがある。悲しいけどそういうことは行われていると石井さんは語る。
もう一つ、深刻な問題が。
解雇された多比良和誠氏にインタビュー。年間1億円以上の研究費を使っていた。
実験は若手がやっていたが、その人物はNatureに論文が乗っていたので研究室に雇った。
若手研究者に不正が発覚し、教授も若手研究者も懲戒解雇された。
大学のポストを巡る問題もあった。
11人が関与していたとされる事例。期限付き雇用の人が10人もいて、いつ首を切られるかわからない状況だった。
1990年には6000人の博士課程修了者が、15000人を今や超えている。
安定したポストはこの10年で4500人削減された。
どうしたらなくせるのか?
アメリカ・カリフォルニア。
ノーベル賞を受賞したランディ・シェックマン教授が宣言書をまとめた。
研究者の評価にインパクトファクターを使わず、研究そのものを評価すべきという。
NIH、アメリカ国立衛生研究所も改革に乗り出した。
年間8万件の申請書が送られてくる。研究者にまずは評価してもらうが、
どの研究に配分するかを決めるのに250人の研究者を直接雇用する。100億円を審査につかっている。
申請書の内容も、実績欄を科学にどう貢献してきたかを具体的に書く。
計画欄も実験の正確さ・再現性をどう担保するかを書く。
計画している実験で期待しているとおりにならないときにどうするかが書かれていないと×。
行き過ぎた配分もやめた。資金の上限を決めた。
リチャード・ナカムラ センター長は不正はなくせないが最小限に抑えることはできる。それはお金も人出もかかるが、労を惜しむつもりはないと語る。
ノーベル賞を受賞した大隅教授は、研究費を助成する財団を作った。
目立たず、埋もれてしまう研究に助成したいと。
大隅さんが成果を出した論文も、有名科学雑誌ではなかった。
今の時代ではキックアウトされていただろう、と語る。
変な奴も内包しながら、面白いことを考えている人を大事にする、多様性を認めないといけないと語る。
渡邊研究室は教授以外のメンバーは去っている。
堀教授は現状ではインパクトファクターの高い雑誌への掲載を狙うのは仕方ない、本末転倒で大きな問題とは思っているが、と語る。
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