複素誘電率(透磁率)はなぜε=ε'-jε"と虚数成分がマイナスなのかということをよく聞かれるのでまとめる。時間発展が物理でexp(-iωt)で工学がexp(jωt)なのとも関わりがある。電場と電界の差じゃなくて本当に符合が違うので。
4月になって新しい人が入ってきて、よく混乱するのがなんで複素誘電率や複素透磁率が
ε=ε' - j ε"
μ=μ' - j μ"
と虚数成分がなっているのか?ということ。
特にうちの職場のように材料も開発するし、電気回路も設計するし、だとこれは知っておかないとということでまとめる。
ちょうどこの前、電場と電界の違いのTweetも見たことだし。
大学院まで理論物理専攻で、なんだよ電界って、電場だろ!と思っていた。
— tomo (@tonagai) April 17, 2022
しかし就職して高周波デバイス設計エンジニアの職についたらもう電場とは全く言わなくなって電界・磁界が染みついたのは自分でも不思議。
周りに通じないから、というのが大きい。 https://t.co/V1Flwq8IzO
※関連リンク
exp(-iωt)とexp(jωt)の違い(物理と工学)の歴史的経緯を知りたい。
世紀の大発見!? i = 1/jか![exp(-iωt)とexp(jωt)の違い(物理と工学)]
まず、工学では時間発展はexp(j(ωt-kx))、量子力学など物理ではexp(-i(ωt-kx))と符合が逆になっている(iとjの差は置いといて)
工学からやってみよう。
V=Vo exp(jωt)
のように電圧は時間発展する。
で電束密度Dと電界E、分極Pは D=εoE+Pと書ける。
ガウスの法則から
∲D・dS=Q
だが、分極は一番簡単には電界に比例するが、反応が遅れて追随するので時間遅れがあるはず。
今一定の交流電界Eo exp(jωt)をかけるとすると
P(t)=αE(t)=αEo exp(jω(t-τ))
のようにτ遅れたようにかける。そのため、
D=(εo+αcos(ωτ)- jαsin(ωτ))Eo = (ε' - j ε") Eo
と虚数部にマイナスがつく。
これにガウスの法則を適用すると、
(ε' - j ε")S/d V=Q
となる。Vの比例係数をCとおくと
Q=CV、微分して
I=CdV/dtになるが、ここでも時間微分にはjωがかかるので
I=jωC V
となるが、ここで複素誘電率の虚部がマイナスのおかげで
I=(G+jωCr)V
みたいに抵抗成分が正の値としてあらわされる。
ということで結局exp(jωt)と工学で書くのは、インピーダンスの抵抗成分が+になるようにしたいから。
じゃあ物理的にexp(-iωt)にしたら?
下にその結果を書いてますが、インピーダンスが虚数成分が通常の定義から-をつけたものになる。
※別に困らないといえば困らないが、慣習上こんなことはしない。
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