NポートSパラメータのポートごとに2ポートSパラメータをカスケード接続するときの変換式を完全に忘れていたので思い出す…
考えている状況は以下の通りで、NポートのSパラメータ(Sa)の各ポートごとに2ポートのSパラメータ(S(i))がくっついたとき(マッチング回路やDe-embeddingのような場合)、最終的に合成されたSパラメータ(Sm)を求めたいとする。
入射波aiと反射波biの関係がSパラメータSa。
\begin{equation} \left(\begin{array}{cccc} b_{1} \\\ b_{2} \\\ \vdots \\\ b_{n} \end{array}\right) = \left(\begin{array}{cccc} S_{a11} && S_{a12} && \cdots && S_{a1n} \\\ S_{a21} && S_{a22} && \cdots && S_{a2n} \\\ \cdots && \cdots && \cdots && \cdots \\\ S_{an1} && S_{an2} && \cdots && S_{ann} \end{array}\right) \left(\begin{array}{cccc} a_{1} \\\ a_{2} \\\ \vdots \\\ a_{n} \end{array}\right) \end{equation}
ここで各ポートにつく2ポートのSパラメータS(i)の入射波と反射波の関係を考えると、Nポートでつながっているところの入射波が2ポートSパラの反射波になっていて、逆に反射波は入射波になっている。ということでこう書ける(Tパラメータと同じ考え方)
\begin{equation} \left(\begin{array}{cccc} b_{1}' \\\ a_{1} \end{array}\right)= \left(\begin{array}{cccc} S_{11}^{(i)} && S_{12} ^{(i)} \\\ S_{21}^{(i)} && S_{22}^{(i)} \end{array}\right) \left(\begin{array}{cccc} a_{1}' \\\ b_{1} \end{array}\right) \end{equation}
これがNポート分できる。で、成分を並べ替えてベクトルb', a', aを作る。ここがトリッキーなところ。Γijは対角行列になっている。
\begin{equation} \left(\begin{array}{cccc} b_{1}' \\\ b_{2}' \\\ \vdots \\\ b_{n}' \end{array}\right) = \Gamma_{11} \left(\begin{array}{cccc} a_{1}' \\\ a_{2}' \\\ \vdots \\\ a_{n}' \end{array}\right) +\Gamma_{12} \left(\begin{array}{cccc} b_{1} \\\ b_{2} \\\ \vdots \\\ b_{n} \end{array}\right) \end{equation}
\begin{equation} \left(\begin{array}{cccc} a_{1} \\\ a_{2} \\\ \vdots \\\ a_{n} \end{array}\right) = \Gamma_{21} \left(\begin{array}{cccc} a_{1}' \\\ a_{2}' \\\ \vdots \\\ a_{n}' \end{array}\right) +\Gamma_{22} \left(\begin{array}{cccc} b_{1} \\\ b_{2} \\\ \vdots \\\ b_{n} \end{array}\right) \end{equation}
ここまで来たら後は簡単。
\begin{equation} \boldsymbol{b'} = \Gamma_{11}\boldsymbol{a'} + \Gamma_{12}\boldsymbol{b} \end{equation}
\begin{equation} \boldsymbol{a} = \Gamma_{21}\boldsymbol{a'} + \Gamma_{22}\boldsymbol{b} \end{equation}
2つ目の式にSaをかけると
\begin{equation} \boldsymbol{b} = S_{a}\Gamma_{21}\boldsymbol{a'} + S_{a}\Gamma_{22}\boldsymbol{b} \end{equation}
\begin{equation} \boldsymbol{b} =(I - S_{a}\Gamma_{22})^{-1} S_{a}\Gamma_{21}\boldsymbol{a'} \end{equation}この式を1式目にいれると
\begin{equation} \boldsymbol{b'} = \left( \Gamma_{11}+ \Gamma_{12}(I - S_{a}\Gamma_{22})^{-1} S_{a}\Gamma_{21} \right) \boldsymbol{a'} \end{equation}
ということで最終結果は
\begin{equation} S_{m} = \left( \Gamma_{11}+ \Gamma_{12}(I - S_{a}\Gamma_{22})^{-1} S_{a}\Gamma_{21} \right) \end{equation}
1ポートのキャリブレーションと同じような形をしているのが面白い。
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