パンサー尾形さん出演のNHK 笑わない数学 非ユークリッド幾何学を録画していたものを見て速記メモした。尾形さんが三角形の内角の和が180°を証明するとかドロテア・バーンズ博士のプロフィール写真が若いとかエディントンの名前と日食が出なかったとか面白かった。
パンサー尾形さんが登場。
今回のテーマは非ユークリッド幾何学。またわけのわからないことを、と思ったでしょ。
でも非を取るとみなさんも中学校で習っているんですよ。
例えば、二等辺三角形の底角が等しいことを証明しなさいとか、
三角形の2辺の中点を結ぶ線がそれ以外の辺と平行であることを証明しなさいとか。
図形の証明のことなんです。中学では50個、高校では数えられないほどの図形の性質が出てきます。
でも全ての図形の性質は、たった5つのめっちゃカンタンな超あたりまえの事柄から自動的に証明できちゃう。
公理1 2つの点を通る直線は一本しか引けない
公理2 直線はいくらでも伸ばせる
公理3 ある点を中心にして任意の半径の円を描ける
公理4 直角はすべて等しい
公理5 直線と点があるとき、点を通って直線に平行な直線は1本しか引けない
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%B9%BE%E4%BD%95%E5%AD%A6%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E8%AB%96/%E5%85%AC%E7%90%86
そりゃそうでしょ!
と、どれもめっちゃカンタンで蝶あたりまえのことばかり。でもどんな複雑な図形の性質もこれら公理で証明できてしまう。
本当?
試しに一つやってみよう。
問題:平行線の錯角が等しいことを証明しなさい。
中学ではちょっと難しいということで証明なしでOKになっているが頑張ってみよう。
錯角が等しくないとしましょう。では片方の錯角の頂点に別の錯角を持ってきて、その頂点を通って
別の線が引けます。この線はもう一つの線と平行?
いえいえ、それはない。
公理5 直線と点があるとき、点を通って直線に平行な直線は1本しか引けない
なのに、別の線が平行だとするともう一本引けることになるのでおかしい。
平行でない線のこの先を通っていくと?平行線じゃないのでどこかで交わっているはず。
この交わった2つの線をコピーしてひっくり返す。
そして2つの錯角を比べる。この2つ同じはず。ぴったり重なるはず。
重ねると2本の直線が2点で交わっていることになる。
これは公理1 2つの点を通る直線は一本しか引けない、に反する。
結局何がいけなかった?最初に錯角が等しくないと言ってしまったから。
なので必ず等しい、ということになる。
https://math-fun.net/20220615/25301/
平行線の錯角が等しいなら平行線の同位角は等しい、平行四辺形の対角は等しい、など様々な図形の性質が
次々と証明される。
2000年以上前に発見したユークリッドにちなんでこの分野はユークリッド幾何学と呼ばれるようになった。
パンサー尾形さんも証明にチャレンジ!
三角形の内角の和が180°であることを証明せよ。
ヒントをくれ!
三角形の辺を伸ばす。そして底辺に平行な線を引く。
錯角が等しいことを使う。
2か所の錯角が等しいことを使って…180°になる。
おみごと!
https://sugaku.fun/triangle-interior-angle2/#:~:text=%E3%81%A1%E3%81%AA%E3%81%BF%E3%81%AB%E4%B8%89%E8%A7%92%E5%BD%A2%E3%81%AE%E5%86%85%E8%A7%92%E3%81%AE,c%EF%BC%9D180%C2%B0%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
実は数学者たちもこの強力なパワーに魅せられた。
パップスの定理。2つの線に勝手に3つの点を書いて結ぶと交わる点も常に一直線上になる。
https://goukaku-suppli.com/archives/43032
ピタゴラスの定理、モーリーの定理、ヒポクラテスの定理、フォイエルバッハの定理、プリアンションの定理などなど全部5つの公理から証明される。
どれも絶対にこれしかない、正しいとしか思えないものばかり。
唯一無二の絶対的なものと思われた。
長年、幾何学を研究するゲッチンゲン大学の教授、ドロテア・バーンズ博士(Dorothea Bahns)は
ユークリッド幾何学ほど人々の信頼を集めたものはない、揺るぎのない論理体系と思われた。ニュートンやカントでさえ正しさを疑わなかった。
https://www.uni-goettingen.de/de/95208.html
(プロフィール写真が若い!)
またパンサー尾形さん登場。
誰もがこれしかない、と思われる公理からありとあらゆることが証明でき、唯一無二、絶対真理、完全無欠の論理体系として学問の世界に君臨した。
ところがです。実を言えば、これちょっとおかしいんじゃない?という噂がささやかれていた。
それは公理5 直線と点があるとき、点を通って直線に平行な直線は1本しか引けない
長ったらしくてまどろっこしいんじゃないか?と煙たがられていた。
それが非ユークリッド幾何学の発見につながる。
5世紀の数学者プロクロスは「公理5は公理の中から除外しなければならない」と言った。
数学の王と呼ばれたガウス「公理5に関する研究ほど多く書かれたものはない」と言った。
しかし何の問題もみんな見つけられなかった。
そのころ、一人の若者がちょっと風変わりなアプローチを試みていた。
ハンガリーのボヤイ・ヤーノシュだ。ちょっと思い付きでこんな空想をしてみた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%A4%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%82%B7%E3%83%A5
1本しか引けない、の部分を2本以上引けるとしたら何が起きる?
ボヤイの世界では2本とも交わらない。こんな世界ありえっこない?
ボヤイの公理5で図形の証明ができるか考えた。ユークリッド幾何学とまったく違うものが次々証明できた。
三角形の内角の和は180°未満だ、など。
これは全く異なる常識に支配された世界を発見したようなもの。ボヤイは父に手紙で、
「私は何もないところから全く新しい世界を作り出してしまいました」とつづった。
これこそが非ユークリッド幾何学の発見だった。
ユークリッド幾何学は唯一無二の絶対真理として学問の世界に君臨していた。
でもボヤイの考えた世界もちょっと風変わりだけど図形の世界が大きく広がっていた。
でも私たちの世界から見るとへんてこりん。
三角形の内角の和が180°未満?そんなものあり得ないという当時の反応だった。
ボヤイは論文で発表したが、数学界からは見向きもされなかった。
しかしドイツの数学者、ベルンハルト・リーマンは
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3
今度は公理5を平行線は1本も引けない、というものを空想してみた。
すると今度は三角形の内角の和は180°より大きい、という結論に。
この場合も新たな図形の世界が広がることが分かった。
唯一無二、絶対真理として君臨していたユークリッド幾何学に突飛な空想を基に無理やり作り出された非ユークリッド幾何学(楕円幾何学、双曲幾何学)。
このいびつな存在をどう考える?
多くの数学者はナンセンスだ、矛盾が見つかるだろうと考えていた。
ところがボヤイの発見から40年後、驚くべきことが判明する。
エウジェニオ・ベルトラミとフェリックス・クラインは
「ユークリッド幾何学に矛盾がないならば非ユークリッド幾何学にも矛盾は存在しない」
ということを数学的に証明した。
これはユークリッド幾何学も非ユークリッド幾何学のどちらが正しいかは数学的に決められない、どれも正しい幾何学ということになる。
ドロテア・バーンズ博士は
「そもそも非ユークリッド幾何学の発見自体が常識破りだったが、非ユークリッド幾何学に矛盾がなさそうということになったさらに人々を困惑させた」と語る。
またパンサー尾形さん登場。
でも一体どこに三角形の内角の和は180°じゃない世界がある?おかしいでしょ?この世界では180°ぴったりでしょ?意味ない!
僕もそう思っていた。
20世紀に入って実際に見つかってしまった。
アルベルト・アインシュタイン。1916年、一般相対性理論を発表した。
これは時空が質量の影響で非ユークリッド幾何学的に湾曲することを予言していた。
1919年、アインシュタインの理論を証明するための観測がアフリカとブラジルで行われた。太陽の近くを通過する星からの光が曲がるのか?
観測の結果は、予言の正しさが証明された。
これは太陽の周りで三角形を描いたとすると、その内角の和は180°にならないことを意味していた。
(エディントンの日食時の観測の話ですね。)
https://gigazine.net/news/20200612-eclipse-photo-made-einstein-famous/
どうです?私たちの暮らす世界に非ユークリッド幾何学が実際にあったなんて驚きですよね?
数学者にとっては信じていたものが完膚なきまで壊されたというような衝撃だった。
ユークリッド幾何学はこれしかない、から作られたもの。
数学者のこれしかない、というのが間違っていたとわかった。
1+1=2
というのが本当に正しいのか?
数学者たちは不安になりはじめた。
何が正しくて何が間違っているかしっちゃかめっちゃかになった。
そのあとどうなった?
また改めて紹介します。
お疲れ様でした!
これはだめだ、難しすぎるわ、久しぶりの感じ、いつもやっている仕事と真逆だから…という尾形さんでエンディング。
次週はコラッツ予想だそうです。
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