パンサー尾形さんのNHK笑わない数学 虚数を録画したのを見てメモ。(-1)×(-1)=1の証明、カルダーノの公式、オイラーの公式、ガウスの代数学の基本定理、そしてシュレディンガー方程式も登場。Python(SymPy)で出てくる式をいろいろ計算してみた。
第1シーズンでやっていたのを見逃していた虚数をやっとみられた。以下メモ。
パンサー尾形さん登場。虚数。そう、2乗するとマイナスになる…アレです。。√-1(虚数単位i).
なんか学校で習ったなー、あれのせいで数学が嫌いになったんだよなー、なんて人もいるかもしれませんね。
虚数はとてつもなくへんてこりんな数なんです。
例えば√-1と2√-1、これどっちが大きい数?どっちともいえない。
そもそも私たちが知っているどんな数でも2乗すればかなららず+の数になりますよね。それなのに2乗してマイナスになるなんて、
異常すぎます!
虚数はひょんなことから数学の歴史に登場することになるんですけど、数学者を何百年も悩ませた。
しかし虚数なんてありえないと考えていては、数学はうまくいかない。それどころが私たちだって虚数がなければ存在さえできないことがわかってきた。
一体なぜ虚数のようなへんてこりんな数をうけ入れなければならないんでしょう?
それを知るために私たちが1,2,3,4,5、…といった数や、11/35、√2、といった数を受け入れることができているのかを考えていこう。
そもそも数はどうやって誕生したのか?それは歴史が始まるはるか以前、私たちの祖先はりんごとロープがまかれた杭に共通点があることに気付いた。例えば3。抽象的な概念を発見した。
同じように身の回りのさまざまなことから自然数と呼ばれる数を見つけていった。
分数を受け入れるのは難しいことではなかった。一つのリンゴを3つに分ければ1/3、5の長さを2つにわければ5/2の長さというわけです。
自然数と分数で表される数で、世界のあらゆる長さが自由自在に表せた。
自然数と分数、今でいう有理数が数の全てだと思っていた。
しかし√2のような無理数は含まれていない。人類が無理数を受け入れるのには時間がかかった。
一つの事件を紹介しよう。
主人公はピタゴラス。ピタゴラスは数学者であっただけでなく、教団の教祖でもあった。数多くの弟子を率いていた。
スローガンは「万物は数である」(この場合の数は有理数)。
ところが数を研究するうちに大騒動が巻き起こる。それはピタゴラスの定理(三平方の定理)。直角三角形では斜辺の長さの2乗は他の辺の長さの2乗を足し合わせたものになる。
a²+b²=c²
このことからピタゴラスの弟子のひとり、ヒッパソスがとんでもないことを発見してしまった。
ヒッパソスの発見は、辺の長さがどちらも1の直角三角形で斜辺はどうなるか?
2 = c²
だからいまなら√2。
ピタゴラスはヒッパソスを処刑してしまったと伝わっている。
なんで√2が有理数で表されないか、パンサー尾形さんが証明する。
√2が有理数で表せたとしたら何が起きる?
√2=Q/Pと仮定する。
√2P=Q
両辺を2乗すると、
2P^2 = Q^2
Q^2を素数の掛け算に分解したとき、素数2は偶数個でてくる?奇数個出てくる?
Qがどんな数だったとしてもQ^2には偶数個出てくる。
左側は?
Pがどんな数だったとしてもP^2には偶数個でてきるから2P^2には奇数個出てくる。
あれ?左が奇数個で右が偶数個?矛盾している。
背理法によって最初の仮定が間違っていたことになる。√2は有理数では表せない。
自然数、有理数、無理数を発見した人類。次はいよいよ虚数?
いえいえ、その前にあと2種類受け入れるのに苦労した数がある。
それは0とマイナスの数。
なぜ0を発見するのにそんなに苦労したのか?それまでの数は必ずそこにあるものとして見たり触ったりできた。
何もない物は数で表せす必要がなかった。
今でいう102を表すときにも0は使われていなかった。1・2という数字ではない記号が使われていた。
7世紀ごろのインド。
商売が盛んだったインドではお金の計算のために独特の計算方法が使われていた。
その一つが今でいう縦計算。例えば
1 2 3
- 1 3
-------------
1 1 ・
になる。ここで1の位に注目する。3-3=・。独立した数字のような役割を果たしていることに気付いた。
これが0の発見。これ以降、0が他の数を同じように受け入れられるようになった。
マイナスの数は?
リンゴを一つも持っていない人がりんごを4個あげるのは不可能なので、0-4=0と考えたい。
でもインドではマイナスの数の発見も早かった。
リンゴを持っていない人がリンゴを4個あげると言えば、それは4個分の借りを作ることを意味する。
よって0-4=4の借り。借りを表す記号で-を使うようになり、0-4=-4になった。
商売が盛んだったインドならではの発想。
数の歴史に詳しいイギリスの数学者イアン・スチュアート博士は
https://warwick.ac.uk/fac/sci/maths/people/staff/ian_stewart/
0とマイナスの数の発見は数学にとって革新的だったと考えている。
「0とマイナスの数の発見で重要なことは、数学に関するより多くのことを簡単に理解できるようになったことです。
0とマイナスの数を受け入れたことによってそれまで存在しなかった全く新しい問題が生まれ、数学の発展につながったのです。」
パンサー尾形さん再登場。
なるほど。でも皆さん、マイナスの数の計算ってすんなり受け入れられた?
しっくりこなかったのがマイナスの掛け算。
なんで
(-1)×(-1)=1
になるのか?そんなバカなと思った。しかし今ではすっかり納得しているというパンサー尾形さんが証明する。
まず
(-1)×1 =-1
これはOK?マイナス1を一個持ってくればそれはマイナス1ってことでOK.
次に
(-1)×{(-1) + 1} = 0
括弧の中は0だからOK。
これを書き直すと?
(-1)×(-1) +(-1)×1=0
(-1)×(-1)-1=0 (最初の式から)
両辺に1を足して
(-1)×(-1)=1
(カンニングはたくさんしたが完了)
これで数直線上のすべての数、実数を見つけ出した。さあこれからお待ちかね、虚数の話。
舞台は16世紀のイタリア。医師、賭博師、占星術師、数学者の顔を持つジェロラモ・カルダーノがいた。
カルダーノはある自慢の公式を持っていた。それは3次方程式の解の公式。
どんなふうに答えが求められる?
x^3 + x -2 =0なら代入して
x=1と求められる。
カルダーノはヨーロッパ有数の数学者として知られるようになった。
ところがある日、カルダーノは
x^3-15x-4=0
を解こうとしていた。この式はx=4を代入すると
64 - 60 - 4 =0で成り立つのでx=4は解。
では解の公式に入れると?(PythonのSympyで書いてみた)
この世に存在しないはずのマイナスの数の√、i=√-1が現れてしまった。
こんなばかなことはあり得ない。カルダーノは計算を途中で放り出した。
引き継いだのはラファエル・ボンベリ。
ボンベリもマイナスの数のルートはあり得ないと考えていたが、我慢して計算を続けてみた。
すると、出てきた答えは正解の4。
なんと、カルダーノの公式はマイナスの数のルートを経由しなければ正しい答えにたどり着かないことがあることがわかってしまった。
この√-1は何人もの数学者を悩ませた。17世紀のルネ・デカルトはマイナスの数のルートなどあり得ないという意味を込め、
nombre imaginaire
虚数と名付けた。
アイザック・ニュートンは方程式を解くときに時折現れる虚数について、虚数の解は不可能とみなされるべきである、と残した。
虚数は数として認めるには余りにもとらえどころがなさすぎる。200年ほどこの空気が流れた。
パンサー尾形さん再登場。
当然のことのように思える。数直線の上に虚数が入るところはどこにもない。
しかしこの難問を数学者は解き明かすことになる。
レオンハルト・オイラーは考えた。もし虚数が数であるならば他の数と深い関係があるはずだ。
オイラーは√-1にiという記号を与え、ついに世界で最も美しいと言われる数式にたどり着いた。e^iπ + 1 = 0だ。
この大発見は衝撃を与えた。
続いて数学の王、カール・フリードリヒ・ガウスは、実数と虚数を組み合わせた複素数を研究した。
そして代数学の基本定理、複素数の範囲ではn次方程式はn個の解を持つ(重解は重複して数える)
を証明した。
複素数を数と認めるならn次方程式は必ず解をn個持つ。
例えば4次方程式の場合(Sympyで計算)
このように複素数の範囲で必ず4個の解を持つ。
ガウスは衝撃を受け、このようなことを書き残した。
「素数の存在を無視してしまえば、数学の美しさと滑らかさが大いに失われ、これまで通用してきた真理にさえ絶えず厄介な制限を加える必要を生ずるであろう」(ガウスからベッセルへの手紙)
さらにガウスは数直線と虚数の正しい位置関係を発見した。数直線の上下に存在した。(ガウス平面)
この複素数を使った複素関数論は数学の最も美しい分野ともいわれるようになった。
イアン・スチュアート博士は
「虚数を取り入れることで数学ははるかに強力になりました。虚数は他のどんな数と比べても決して”想像上の数”ではなかったのです。これは驚くべきことです」と語る。
パンサー尾形さん再登場。
虚数があるからこそ、数学があるという感覚を持つようになった。
虚数は数直線と直角に交わるもう1本の別の数直線を使って表される数だった。
でも私は数学者じゃないし、、、と思っているあなた!これを見て欲しい。
20世紀初頭、数学とは少し離れた物理学の分野で大発見があった。
電子や原子などミクロの世界を表す量子力学のシュレディンガー方程式
にあの虚数iが登場していた。(これは最初見たとき私も驚いた記憶が)
これはこの世のありとあらゆるものを支配している。虚数は現実世界においても欠くことができないものだと信じられるようになった。
パンサー尾形さん再登場。
最初は気持ち悪いやつと思われていたのにこの世界の基礎になっている。
ありとあらゆることに繋がっているには納得がいく。
だって、i(愛)はすべてを包むって言うじゃないですか!
(ハイ、カット!が早い。NGです。)
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