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2023年11月17日 (金)

パンサー尾形さんのNHK笑わない数学 ケプラー予想を観てメモ。五角形の平面充填は15タイプとか、ランダムも含めた円充填の証明、コンピュータを使ったケプラー予想証明(MathematicaとJava!)、そして8次元と24次元を証明したマリナ・ヴィヤゾフスカさんのメッセージ。

パンサー尾形さん登場。今日のテーマはケプラー予想。

このケプラーという名前、天文学に興味がある人なら聞いたことがあるかもしれません。惑星の運動に関するケプラーの法則を発見した大天文学者です。そのケプラーの名前が付けられたこの予想、どんな難問?

ことの発端は17世紀初め、イギリスの軍人が知り合いの数学者に、船にできるだけ多くの砲弾を積み込みたいんだけどどう積んだらいいか?

とちょっと物騒な相談を持ち掛けたことでした。

どういうこと?やってみよう!

黄色と緑のピンポン玉が登場。別の箱にできるだけ詰め込もうと尾形さんが頑張る。

まず緑のピンポン玉を一列に、、二列目はその隙間に…(果てしないな)

1層目が敷き詰められた。二層目は黄色。3つの玉のくぼみに入れる。そして次は緑→黄色…

(これは収録に時間がかかってそう)

ケプラー予想とは、無限に広がる空間に球を詰め込むとき、1層目のくぼみに2層目の球を入れていくこの方法が密度が最もおおきくなるはずだ、というもの。

※稠密六方格子と面心立方格子の混合

そんなの当たり前?そのとおりなんですよ。これに決まってるんじゃないか!とわかりますよね。

でもこれが数学的にちゃんと証明されたのはわずか25年前。つまりなんと400年もかかってやっと証明された超難問だった。

数学者たちがケプラー予想をどう解決したかを見る前に、平面充填と呼ばれる問題を考えよう。

目の前に無限に広がる平面があると考えてください。同じ図形を並べていくとき、どんな図形だったらびっしりと隙間なく覆いつくすことができるか?

図形は回転させても裏返してもいいことにする。

まずは三角形。実はどんな三角形でも回転させてくっつけると平行四辺形になる。これを並べていくと長い帯になる。

これを上下に増やしていけば平面を隙間なく埋められる。三角形は平面充填可能である、という。

では四角形は?どんなものでも回転させてくっつけると平行なペアが3つある、平行六辺形と呼ばれる図形ができる。

これはどんなものでも平面を覆いつくすことができる。四角形も平面充填可能。

次は五角形ではなく、六角形にいってみよう。

一般の六角形は平面を覆いつくせない。平面充填可能な六角形は3つのタイプのみと知られている。

https://en.wikipedia.org/wiki/Hexagonal_tiling


Hexagonal_tiling

大抵の六角形はだめだけどこの条件を満たせば平面充填可能。

ちなみに、七角形以上は平面充填不可能であることが知られている。

残るは五角形だけ。実は五角形は大抵のものは平面充填不可能。可能なものを特定することは最近まで未解決だった。

古くから知られていたのは5つ。ドイツの数学者カール・オーガスト・ラインハルトが1918年に発表した。

その後、新しいタイプは全然見つからなかった。1968年、アメリカの数学者リチャード・ブランドン・カーシュナーが新たな三つを発見すると、平面充填可能な五角形探しは一気に注目を浴びた。

1975年にリチャード・ジェームズIIIがまた新たな1つを見つけ、さらに1976-77になんと数学者ではない普通の主婦、マジョリー・ライスが4つ見つけた。1985年にはドイツのロルフ・シュタインが14個めを見つけ、2015年にはスーパーコンピューターを使って、ケイシー・マン、ジェニファー・マクラウド・マン、デビット・ヴァン・デラウが15個目を見つけた。

https://en.wikipedia.org/wiki/Pentagonal_tiling

Pentagonal_tiling

そして2017年、平面充填可能な五角形は15タイプで打ち止めであるとマイケル・ラオに証明された。

Exhaustive search of convex pentagons which tile the plane

Pentagonal_tiling2

パンサー尾形さん再登場。

2次元の平面にこんなに時間がかかったなんて。ここで思い出してください。ケプラー予想は3次元の空間に球を詰め込む問題でしたよね。

さらに難しくなりそうな気がします。なのでちょっとだけ簡単な問題をやってみよう。

今度はスタジオに円を敷き詰めるが、床に占める円の密度が最も大きくなる方法を見つけてください。

嫌がりながらもやってみる尾形さん。まず一列に円を並べ、二列目はくぼみに入れる。またこれも時間がかかって終了。

これにきまってるでしょ!誰だってわかるよ!

いえいえ尾形さん、この円充填と呼ばれる大昔から知られていた問題も、数学的にきっちり証明されたのは1940年代のことだった。

なぜなら無限に続く平面に円を並べるとき、尾形さんがやったように規則正しく並べる方法よりもランダムに並べる方が密度が大きくなるかもしれない。ランダムだと隙間が大きくなる?確かにそんな気もする。

こう考えよう。

ある一つの円の周りだけを考える。そこに7つの円が集まっている例が作れる。尾形さんの場合は6つ。密集しているのはどっち?

不思議な問題。

カール・フリードリヒ・ガウスも円充填の問題を詳しく議論している。ガウスは規則的な並べ方に限定して研究した。

※ガウスはラグランジュの研究と合わせて事実上規則的配置の場合を証明したとされる

さっきの尾形さんの並べ方のときに密度が最大になることを示した。その円の密度(平面に占める円の割合)≒90.69%だった。

しかしガウスはランダムな並べ方をしてもこれが最も最大なのかについては研究を残さなかった。

円充填の問題を解決したのは、ハンガリー出身のラスロ・フェイエシュ=トートだった。

幾何学の論文を180本以上発表するなど充填問題の権威として知られている。

1940年、「ある幾何学の定理について」

https://link.springer.com/article/10.1007/BF01181430

という論文で、ランダムな並べ方を含む円充填問題の証明。いきなり無限の広がりを考えるのではなく、まずは有限の広さの領域に円を並べることからスタートするものだった。

面積Tのものすごく大きな広がりに円をランダムに並べていくと考えてください。

円の半径はr、個数はn個としましょう。円1個の面積はなのでn個の円の面積はnπr²になる。
ということは円の密度はnπr²/Tになる。

この密度が大きくなるのはどんなとき?フェイエシュ=トートは円と円の真ん中に線を引いてn個の多角形を作っていくことを考えた。
多角形の形はいろんなものがあるが、どの多角形の面積も正六角形の面積より辛なず大きくなることを突き止めた。

正六角形の面積は計算すると2√3r²になる。

2√3r²×n ≦ n個の多角形の面積の合計

になる。これを変形すると、

nr²≦n個の多角形の面積の合計/2√3

でさっきの円の密度=nπr²/T

に入れると、

円の密度≦π/2√3 × n個の多角形の面積の合計/Tになるが、n個の多角形の面積の合計は領域が無限に大きくなると面積Tに一致するので、

円の密度≦π/2√3≒90.69%ということがわかった。

これはガウスが考えた最大の規則的な時の密度と全く同じ。

つまりランダムな並べ方を含めてもこれが最大であると証明された。

パンサー尾形さん再登場。

よかったよかった?じゃないでしょ!大変な計算をして導いたのは僕が一瞬で見つけたのと同じ結論だったじゃないですか!

もういい加減ケプラー予想に行きましょう。

無限に広がる空間に球を詰め込むとき、1層目のくぼみに2層目の球をいれていくっていう方法が密度が最も大きくなるはずだ、って話。

これが正しいってことになるんでしょ?

16世紀、ドイツの小さな町で生まれたヨハネス・ケプラー。聖職者を志したこともあるケプラーは

「神は完全なる世界を創造されたので宇宙は幾何学的原理に支配されているはずだ」という強い信念を抱いていた。

ケプラーが40歳のころ友人に自分の本を送ります。その本に記されていたのがまさに尾形さんのやり方.

https://en.wikipedia.org/wiki/Kepler_conjecture

Kepler_conjecture_2

しかしこの予想が正しいという証明をケプラーは残さなかった。この球充填問題に一つの結論を導き出したのは再びあのガウスだった。

ガウスは規則正しい並べ方に限定して調べ、尾形さんのやり方が最大になることを示した。

その密度は74.05%。しかしガウスは円充填と同じく、ランダムな並べ方を含めては調べなかった。その後何の進展もなかった。

再びケプラー予想にスポットが当たったのは1900年。

ドイツの数学者、ダフィット・ヒルベルトが20世紀中に解かれるべき23の未解決問題を発表。

その中にケプラー予想、同じ大きさの球で空間を最密充填するにはどうすればいいか?を入れた。

円充填問題を解決したラスロ・フェイエシュ=トートも取り組んだ。

円充填問題のとき、ランダムに並べられた円を囲む多角形を作り、その1つ1つの面積が正六角形の面積より大きくなることを利用した。

3次元の問題である球充填問題に対しても急を囲む多面体を作り、その一つ一つの多面体の体積がある立体の体積より必ず大きくなるという事実を使えば解けるのでは?と考えた。

その立体とは球にぴったりと接するような正十二面体。

ところがこのアプローチには大きな欠陥があった。全く証明にはたどり着けなかった。理由は2次元のときに正六角形が平面を隙間なく覆いつくすことができたのに対し、3次元で正十二面体で空間を覆いつくそうとしても必ず隙間が生じるためだった。

ケプラー予想が出されてから400年近くたった20世紀の終わり、証明がなされたがそれは思いもよらないものだった。

アメリカの数学者。トマス・ヘールズ博士。1998年、最先端のコンピュータと科学計算用ソフトウェアを使い、膨大な場合分けをしらみつぶしに調べ、ようやくランダムな場合を含めても、最大の密度は74.05%であることを証明した。

A proof of the Kepler conjecture

コンピュータのプログラムはこちらに。

Computer resources for the Kepler conjecture

(おお、グラフはJavaで生成して線形計画法をMathematicaを使って解いてるのか!)

砲弾の最も効率的な積み込み方から始まったケプラー予想は、コンピュータと数学者の共同作業という、意外な形での決着となった。

ヘールズ博士の証明はコンピュータを使ったものだったので、当初、完全な証明かどうかは判断できないとされました。

しかし、その後ヘールズ博士自身が11年かけて、新たにコンピュータを使った検証を行い、今では誰もが認めるようになったそうです。

A FORMAL PROOF OF THE KEPLER CONJECTURE

(HOL Light ,Isabelleという定理証明支援のプログラムを使ったとか。詳細は以下のgithubに)

https://github.com/flyspeck/flyspeck

Flyspeck

いや、これに決まっているとしか思えないことでもそれをきっちり証明しようという数学者に執念には尊敬する。

でも数学者たちはこれで満足したわけではなかった。

これまでの話は3次元の話だった。じゃあ4次元のとき、5次元のとき、など考え始めた。

はあ?なんだ5次元や10次元って?

2022年、数学界に1つのニュースが流れた。

ウクライナ人数学者、マリナ・ヴィヤゾフスカ博士。

8次元と24次元という実際には見ることも触ることもできない世界で、球充填問題を解決した博士にフィールズ賞が贈られた。

マリナさんは「ええ、うれしかったですね」と語る。

Maryna

世界の数学者が高い次元での球充填問題に興味を持ったきっかけは10次元での意外な発見だった。

高い次元での球充填も結局規則的な並べ方が最も密度が大きくなるのでは?と考えられてきたが、10次元では既知の格子充填よりも密度が大きい非格子充填が存在することがわかった。

ヴィヤゾフスカ博士たちも、予測不可能な高い次元での充填問題に強い魅力を感じるようになったという。

今も様々な次元での球充填問題を世界の様々な数学者と協力しながら解決しようとしている。

ヴィアゾフスカ博士は

「8次元と24次元は特別でした。とても不思議な現象が起きているのでそれに引きつけられました。数学はたくさんの驚きを与えてくれます。難しい問題に挑戦することは新たな発見につながるということ。だから私は数学が好きです」

と語った。

スイスの大学で最先端の数学に挑み続けるヴィヤゾフスカ博士。その一方でふるさとウクライナで暮らす両親のことが心配でならない日々が続いている。

それでも世界の数学者たちと、意見や考え方の違いを超えて協力し、難問解決に挑む意義をこう語った。

「この世界に人々の心を一つにできるものが少なくなっています。数学はその一つだと思います。どうかアイデアの共有を止めず、お互いが心を開いて数学に関する問題はもちろん、一緒にこの時代の困難に対する答えを見つけてくれることを願っています。」

パンサー尾形さん再登場。

皆さん、いかがですが、砲弾をどうやって船に積み込むかという物騒な話から始まったケプラー予想ですが、数学者たちが国境を越えて協力して解決しようとしているのを見ると、人間の知性は醜い争いを超えてまとまっている力をしっかり持ち合わせているに違いない。

球を積み上げるのは一瞬で正解にたどり着く問題だったのに、何か深い。。。数学なんて自分とは全く関係ないと思っているあなた!

あなただって生きるためにとっても大切な何かを数学から学ぶ日が来るかもしれませんよ。

だから数学で頭を充填しませんか?

じゃあ、また!

そしてピンポン玉をぶちまけるスタッフ。。。みんなで拾おう。1200個?1800個?

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