NHK 映像の世紀バタフライエフェクト AI 未来を夢みたふたりの天才を見てメモ。アラン・チューリングとフォン・ノイマンの二人のことで、マービン・ミンスキー、ジョン・マッカーシー、ニューラルネットワーク、ディープ・ブルーそしてデミス・ハサビスが出ていた。
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2025051927557
2023年3月、30代の男性の自殺が報じられた。男性は死の直前までオンラインチャットをしていた。相手はイライザ。アメリカの新興企業が開発した対話型人工知能だった。6週間やりとりを続けた後、妻子を残して自殺した。
アラン・チューリングの言葉より
「人間の心の動きを忠実に再現した機械を作ることはできる。それは時に興味深いことを言い、時に過ちを犯す、人間のような存在になるだろう」
75年前、イギリスの天才数学者アラン・チューリングは、考える機械、人工知能が生まれる夢を持った。
その夢を引き継いだのは人間のふりをした悪魔と言われた天才数学者ジョン・フォン・ノイマン。
ノイマンはマンハッタン計画に参加し原爆の誕生にかかわっただけでなく、現在につながるコンピュータの基本設計を考案した。
フォンノイマンの言葉より
「私は今、爆弾よりもはるかに重要なものについて考えている。私はコンピュータについて考えているのだ。」
二人が描いた未来は、コンピュータの爆発的進化とともに現実に近づいていく。開発者は困難を打ち破り、考える機械、AIの道を切り開いていった。
アラン・チューリングの言葉より
「世紀の終わりには、もはや当然のように機械は考えることができると言えるようになるはずだ。そしてあらゆる知的な境域において機械は人間と競い合うようになるだろう」
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ふたりの天才がいなければきっと今はなかった。
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映画イミテーション・ゲーム、第二次世界大戦下で極秘任務についた一人の数学者を描いている。
与えられたミッションはドイツ軍の暗号、エニグマの解読。それを解読できるとしたら、、、アラン・チューリングだった。
ドイツはUボートによる奇襲攻撃で民間船を沈没させ、イギリスは物資の不足に悩んでいた。
ドイツ軍はエニグマを使って暗号化し、縦横無尽に攻撃していた。それは解読不可能と言われていた。アルファベットの26文字から、3枚の歯車と10本のケーブルを組み合わせて暗号化する。
さらに毎日設定を変えており、一京の一万倍の組み合わせがあった。イギリスにとってエニグマの暗号解読は戦争の行方を左右するものだった。
チューリングが足掛かりとしたのはポーランドで開発された暗号解読器。この改良に半年を費やし、36機のエニグマの動きを再現することで自動的に解読する「ボンブ」を作り上げた。
通信文の解読でUボートの位置を把握し、撃沈できた。一人の天才が戦争の流れを変えた。
チューリングの同僚の言葉より
「戦争が始まったときエニグマを解読できると思っていたのはおそらく2人だけだった。絶対に解読しなければと責務に追われた我々の上司と、それを解読するのはとても面白そうだからという理由で参加したチューリングだった。」
アメリカ ニューメキシコ州。一人の天才科学者が戦争の行方を決定づける発明に取り組んでいた。原子爆弾の開発に携わっていたジョン・フォン・ノイマンである。
数学、物理学、流体力学で天才の名をほしいままにていた。ノイマンはプルトニウム型の最大の難関だった爆薬の配置を設計し(爆縮レンズだ!)核分裂を制御する計算を半年かけて導いた。
フォン・ノイマンの言葉より
「われわれが今作っている怪物は、歴史を変える力を持っている。科学者が科学的に可能であることを実現しないことは倫理に反するのだ。その結果どんなに恐ろしいことになるとしても」
ーーー
原子爆弾は完成の1か月後長崎に落とされ、7万人以上の命をうばった。
巨大な人工頭脳がペンシルベニア大学で動き始めた。
アメリカ陸軍はコンピュータの開発も進めていた。弾道計算のためのコンピュータ、ENIACが完成する。1万8000本の真空管を制御して毎秒5000回の演算が可能だった。
ノイマンはエニアックに可能性を見出した。
フォン・ノイマンの伝記より
「その出会いが彼の人生を変えました。エニアックは爆弾を作る道具としての有用性をはるかに超えて全く新しい構想をノイマンに与えたのです。」
ノイマンは戦前、プリンストン大学に留学していたチューリングと出会い、その論文に影響を受けていた。
チューリング・マシンとよばれる仮想の機械について提唱していた。与えたプログラムに応じて様々な計算ができる万能計算機。
この概念を形にしたのがノイマンだった。ノイマンはエニアックの致命的な欠点を改善しようとした。
エニアックは計算の内容に応じて6000個のスイッチやケーブルを切り替える必要があり、人為的ミスで計算間違いが多かった。
ノイマンは計算の命令を手動ではなくプログラムとして内蔵できる新しいコンピュータを設計する。ENIVACだ。
現在のコンピュータに繋がる設計図がこのとき生まれた。
同じころイギリスでもコンピュータの開発が進められていた。2^127-1が素数かどうか人間なら6か月かかる計算を25分でできる。
しかしその開発の主役はチューリングではなかった。1952年、あるニュースが報じられた。チューリングが男性とわいせつな行為をしたという理由で同性愛の罪で逮捕され、有罪となり、ホルモン治療を受けさせられた。同僚、I.J.グッドは当時をこう振り得っている。
「チューリングが同性愛者であったことは戦後まで知らなかった。もし暗号解読の任務中にこの事実を知られていたら彼は解雇され、その結果私たちは戦争に負けていたかもしれない」
逮捕の2年後、チューリングが自宅で死亡しているのが発見された。部屋には青酸カリの入った瓶とかじりかけのリンゴが残されていた。
死の4年前、チューリングは重要な論文を残している。人間の思考は数学的な計算に置き換えることができ、高性能のコンピュータができれば考える機械が誕生すると予見した。
チューリングの遺産が人工知能研究への扉を開くことになる。
アラン・チューリングの言葉より
「これは将来の予兆である。新しい可能性に到達するには何年もかかるかもしれないが人間の知性が必要とされる分野にそれが進出して人間と対等に競うことになったとしても不思議ではないだろう」
ーーー
戦後、水爆の開発を主導したのもノイマンだった(いやテラーじゃないの?)。ソ連を攻撃すべきか否かはもはや問題でない。問題はいつ攻撃するかだ。明日爆撃するというならなぜ今日爆撃しないのか?今日の5時に攻撃するというならなぜ1時にしないのかと言いたい。
スタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」。登場する科学者はノイマンがモデルともいわれる。
ノイマンは人間のふりをした悪魔と呼ばれるようになっていた。
ノイマンの設計したコンピュータは水爆の核融合反応を計算するのは使われた。プログラム内蔵型コンピュータ、IASマシン。
科学史家ジョージ・ダイソンの言葉より
「人間の発明品のうち、最も破壊的なものと最も創造的なものがまったく同時に登場したのは偶然ではなかった。」
しかしノイマンの興味は脳に移っていた。1950年代。脳の神経による情報伝達の仕組みが解明されようとしていた。ノイマンはニューロンのネットワークが情報を伝える手段が電気信号であることに着目した。
フォン・ノイマンの言葉より
「脳の神経系とコンピュータを比較することは極めて興味をそそる楽しいことです。その仕組みには類似性がある。」
ノイマンは脳を計算機としてとらえ、その機能を数学的に分析しようとした。しかしその研究は未完に終わる。
1956年、ノイマンは大統領自由勲章を受章した。このときノイマンはガンに侵されており、翌年息を引き取った。
ともに水爆を開発したエドワード・テラーはノイマンの最後を語っている。「多くの人々が不思議に思っていた。ノイマンの頭脳はなぜあれほど早く効率的に機能したのかと。病院を訪ねるたびに彼は私と議論しようとしたが、彼の脳はもはや以前のように機能することはなかった。彼は「知性を失う」ということに他のどんな人間よりも苦しめられたことだろう。」
チューリングとノイマン、2人の未完の研究は数十年後大きく世界を変えることになる。
トランジスタの発明だ。真空管が指先ほどのトランジスタに置き換わった。コンピュータもトランジスタ式(608がでてる)に置き換わった。
巨大だったコンピュータは小さく高性能になった。
1956年ダートマス大学に科学者たちが集い、ある会議を開いた。彼らはここで、人工知能 AIという言葉を初めて提案しその研究が始まった。
考える機械を作り出すことが目的だった。
アラン・チューリングの言葉より
「人間の心を模倣しようとするならば心が成長するプロセスを尊重しなくてはならない。子供の心を模倣するものを作ったらどうだろう。これに教育を受けさせれば大人のように考える脳が実現するだろう。」
人工知能研究の第一人者の一人、マービン・ミンスキー。人間の子供が経験を通して成長するプロセスを機械で再現しようとした。
コンピュータに自ら積み木をさせる実験の映像が流れる。
ミンスキーの言葉
「分かったのは人間にとって難しいことが機械には簡単で、人間にとって簡単と思えることが機械には難しいということだった」
さらに研究者たちが注目したのは脳の神経、ニューロンが学習する仕組みだった。
脳の神経回路が学ぶ仕組みをコンピュータで模倣する。ニューラルネットワークと呼ばれる研究が始まった。
たくさんの写真を読み込ませ、男性か女性かの正解を教えることで学習していく。
60年代後半、限界がささやかれ始めた。当時は計算能力が不足していた。チェスもアマチュアの試合で善戦する程度。
莫大な政府予算が投入されたが成果が出ない人工知能研究は批判されていく。
ジョン・マッカーシーが答えていた。非常に厳しいと。しかしこの分野は自分はいなくなっても成長すると。
そこから長きにわたる冬の時代を迎えた。
しかし1997年、計算能力を飛躍的に上げたスーパーコンピュータが現れた。IBMのチェス用、ディープブルーがチェスの王者に勝った。
しかしまだ考える機械とは程遠い。
ジェパディというクイズ番組でIBMが開発した人工知能、ワトソンがクイズチャンピオン2人に挑んだ。
ウェブサイトや書籍などさまざまな画像をワトソンに読み込ませ、過去の数十万の問題で猛特訓した。
間違いを繰り返す中で重要なキーワードを見つけだせるようになっていた。そしてチャンピオンに勝った。
それは人間が手取り足取り教育を重ねたうえの勝利だった。自ら進化する人工知能を目指して開発は続く。
2016年、AlphaGoが登場した。世界最強の囲碁棋士に挑む。この8年後ノーベル賞を受賞したデミス・ハサビスが開発を主導した。
10代のころから天才プログラマーだった。
脳の仕組みをコンピュータで模倣した。直感力を持たせようとした。数多くのデータを学習させ、また人工知能どうしで対局させた。
そしてイ・セドルに勝った。
そして2024年、デミス・ハサビスはAIの開発者として初めてノーベル化学賞を受賞した。受賞理由はアミノ酸の配列からタンパク質の立体構造を予測するAIを作ったこと。
デミス・ハサビスはチューリングマシンはこれまで考えられていたことよりもはるかに多くのことを成し遂げる可能性があると語った。
中国のdeepseekもあらわれ、AI開発競争が繰り広げられている。日々、爆発的な進化を遂げている。
2022年、Gopgleが開発したLaMDAが物議をかもした。意識を持っていると開発者が言ったのだ。
アラン・チューリングの言葉より
「神が機械に魂を授けることなどないと言い切れるだろうか。このような機械を作ろうとするとき、私たちには神のように魂を創造することはできない。むしろ私たち人間はその魂の入れ物を提供するための道具に過ぎないのだ」
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しかしフォンノイマンはパラメータの多い理論が嫌いで、
(パラメータが4つあったら象だって描けるし、5つありゃ象の鼻を動かせるわ!)
と言ったという話なので今のパラメータが多いAIについては苦々しく思っているのかも…
本当のところはパラメータいくつで象の絵が描ける? -フォンノイマンとWolframAlpha
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