書籍・雑誌

2022年1月10日 (月)

「原因において自由な物語」(五十嵐律人さん)を読んだ。学校でのいじめ、スクールロイヤー、そしていじめを助長する「顔面偏差値」アプリ。面白い、というだけでは表現できない深い余韻が残る作品でした。

いじめの悪意とかもう読んでてつらい、、、がそれに目を背ければこの話がなかったことになる作品です。

あらすじは「ミステリ作家の二階堂紡季には弁護士の遊佐想護という恋人がおり、実は想護が作品のプロットを書いていた。あるとき、想護が奇妙なプロットを持ってくる。それは学校を描いたもので、プロローグで男の子が投身自殺したともとれた。プロットの途中までで結末を当てると紡季は言い、推理を始めるが、、、」

というもの。

作者の五十嵐さんが弁護士でもあるということで法律的な描写は興味深いし、ありそうなアプリ(顔面偏差値を出すもの、それを利用したマッチングアプリ)が効率的に使われているがなによりいじめの問題を真正面に触れられていることに感銘を受けた。

とても面白い作品なのですがそれだけでは語れない作品でした。

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2021年12月31日 (金)

テスカトリポカ(佐藤究さん)を読んだ。ANK:a mirroring apeがめちゃくちゃ面白かったのでこれもすぐ読もうと思っていてタイミングを逸していたが、やはりこれも面白い!麻薬戦争・アステカの神・心臓移植と関係なさそうな話が繋がる。

ANK: a mirroring apeはめちゃくちゃ面白かった。でこのテスカトリポカが出たときも、あー読みたいなー、でも文庫版が出るまで待つか、、、とか呑気にしてたら直木賞獲られて、で買いに行っても全部売り切れ、、、今は平積みになってますが、タイミングを逃していた。

それでも何とか2021年中に読もうとおもってようやく間に合った。やっぱり面白い!

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舞台は麻薬戦争が勃発して治安が極めて悪く、腐敗と暴力に満ちたメキシコから始まる。

あるメキシコ人女性が日本で暴力団の男と結婚して生まれ、育児放棄をされているもののものすごい身体能力を持つコシモ、

そしてその麻薬戦争のカルテルの幹部で、敵対するカルテルから兄弟・家族を殺されたバルミロ、

そのバルミロが祖母から教えを受けたアステカの神々(今の基準で言うと完全に邪教になってしまう、、、いけにえや人の皮を剥ぐとか、、、)、

そして高い技術で心臓移植を行う天才外科医でありながら、ある事情で警察に追われジャカルタで肝臓移植コーディネータをしている末永、

一体これらの人物たちが何のかかわりが出るのか全く予想もできないですが、三題噺のように物語が動いていく。

暴力や人体破壊描写も多いのですが、それよりアステカの神々についての描写が恐ろしさを増す。

そして最後は救いがあった、、、と思いたいストーリーです。

暴力的な描写が絶対ダメな人以外にはお勧めです。まあそんなこと言わなくても直木賞作品なんで読んでる人はもう多いでしょうけど。

2021年12月23日 (木)

マツリカ・マジョルカ、マツリカ・マハリタ、マツリカ・マトリョシカ(相沢沙呼さん)の3部作を一気に読む。最初の2作が壮大なネタ振りに思えるくらい三作目がすごい。密室殺人(違うけど)+探偵たちが様々な推理を繰り広げる

medium、invertがめちゃくちゃ面白かったので別のシリーズも読んでみようと一気に読んだ。

マツリカ・マジョルカは「高校1年の柴山祐希はクラスに居場所を見つけられず、冴えない学校生活を送っていた。ひょんなことから学校近くの廃墟に住むマツリカさんとの出会いで一変する。柴犬、と呼ばれパシリ扱いされるも学校の謎を解明するため、否が応でも他人と関わっていく」

マツリカ・マハリタは「2年生になった柴山祐希。マツリカに命じられて学校の怪談を調べる日々が続いている。そこに1年生の時に自殺したという少女の霊が時々校内に現れるという情報が舞い込んできた。」

というような学園ミステリものですが、マツリカさんがドSでエロく、柴山がシンジ君以上にうじうじ、、、(理由は途中で示されますが)してるけどむっつりスケベで案外同級生からもモテてるというキャラもの。

まあ面白いんだけどそんなにはまらないなあ、と思っていたら!三作目でガラッと変わった。

マツリカ・マトリョシカはまさに本格密室殺人もの!(って人は死んでないです)。それに探偵たち(まあ学生だけど)が様々な推理を披露しては間違うというめっちゃ面白い展開!というか最初に登場人物ページと殺人現場図があって笑った。ああ、今までの2作ってネタ振りなのか!と。

巻末の解説でもありましたが、人が死なないミステリの限界に挑戦しているようなすごい展開でした。

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2021年12月12日 (日)

ワインバーグ量子力学講義(上・下、ちくま学芸文庫)を買った。ワインバーグは場の量子論ではディラック方程式は幼稚園で習うと書いていて(原著・和訳とも)、量子力学講義の原著ではベクトルも幼稚園で習うと書いているが、さて和訳は?

物理の本のところではなくて、文庫コーナーに大量に平積みされていた。さすが京都の丸善。最近は新しいスタイルの量子力学の本(量子情報を基にしたものなど)も登場してますが、私はこっちのほうが落ち着く。

Weinberg1

で、ワインバーグは場の量子論で、

物理学者は,このような問題については外場のもとでのディラックの波動方程式を解くやり方を幼稚園で教わる.

原文は”physicists learn in kindergarten how to solve problems related to the wave equation of Dirac in the presence of external fields

Weinberg3

と書いている。

実は量子力学講義の原文でもベクトルは幼稚園で習うと書いてある。

 

Weinberg4

さて、どう翻訳されたか?と見ると。。。

Weinberg2 

おお、幼稚園では習わないで初学者になってる!ちょっと気を使ったのかな、、、

 

こちらも:

 

2021年12月 2日 (木)

生殖ができる生体ロボット、やっぱりDARPAが出資してるのか。ちょうど「合成生物学の衝撃」(須田桃子さん)を読んだところだったので納得。この本にはバイオブリックを使った学生コンテストiGEMやミニマムセルなど知らなかった話題がいろいろ。

今日、この記事読んで驚いた。

世界初の生体ロボット、「生殖」が可能に 米研究チーム

で最後に、”この研究は軍用技術の開発を監督する国防高等研究計画局(DARPA)が一部の資金を拠出した。

とあった。ああなるほど、、、と思ったのはちょうどこの「合成生物学の衝撃」(文春文庫)を読んだところだったので。

20211201-171854

DARPAが合成生物学に多額のお金を出している話や旧ソ連で軍用に研究されていた話があった。

内容は

「生命の設計図であるゲノムのデジタル可変を可能にした合成生物学。この技術で人類は自然に存在しない生命体を誕生させた。医療に利用できる一方で、軍事転用の危険も。。。」

というもの。

全然知らなかったのは、

学生がバイオブリック(Biobrick)という部品を使って合成生物学のコンテストを行うiGEM。

https://igem.org/Main_Page

https://parts.igem.org/Help:An_Introduction_to_BioBricks

ここまで進んでたのか!

東工大が銀賞をとってるのはうれじい話。

https://www.titech.ac.jp/news/2020/046149

あとミニマムセルも知らなかった。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5710109/

https://www.jcvi.org/research/first-minimal-synthetic-bacterial-cell

この分野すごいな。CRISPR-Cas9の時も思ったけど、私も物理専攻するような時期にこれがあったら、ビルゲイツも言っているように生物を志してたかも。

 

 

遺伝子ドライブ(これは知ってた)、ファインマンの言葉(これは有名)、わたしを離さないで(読んだ!)、など、その他の話題も豊富でなかなか面白かった。

https://darwin-journal.com/gene_drive_overview_mechanism

https://freshspectrum.com/richard-feynman-what-i-cannot-create-i-do-not-understand/

 

2021年11月27日 (土)

「名探偵の証明 蜜柑花子の栄光」(市川哲也さん)を読んだ。密室殺人ゲーム(歌野さん)+探偵がどんどん追い詰められていくようなお話で今回もラストで驚く、、、

シリーズ第2弾の密室館殺人事件で知り合った祇園寺恋が今回も登場。

前回の記録:

名探偵の証明 密室館殺人事件(市川哲也さん)を読んだ。歌野さんの密室殺人ゲーム+流行りのデスゲームと思いきや!仕掛けはもう1ページ目から始まっていた。最近のミステリ作品について登場人物が語ってるのも面白い。

今回のあらすじは「蜜柑花子と前作で助手になった日戸涼のもとに恋が訪ねてきた。未解決事件の真相を6日間以内に解かなければ誘拐された恋の母親が殺されると脅迫を受けているという。大阪、熊本、埼玉、高知を車で移動し、4つの未解決事件を解こうとする蜜柑たちだが、疲労はピークを迎え、、、」

というもの。

歌野晶午さんの密室殺人ゲームが大好きなのですが(全く人間らしいところがなく、ただトリックを示すためだけに殺人を犯す)、それと通じるような未解決事件が4つ(かな???)でてきます。

特に最後の高知のやつは密室殺人ゲームで一番嫌だった殺し方(いやそんなの思いついてもやらない)をさらにパワーアップしたような殺し方をして驚愕。。。大阪のやつは動機に驚愕。。。

驚愕と言えば真相もさらに上を行くものでした。最後に救いがあったのだけは良かったが、蜜柑さんがあまりにも追い詰められすぎで心臓に悪い。

これでこのシリーズは終わり、ということで残念ですが、スピンオフをまだ読んでないので(そこに出てくる人物も今回でてきてるし)それも読んでみよう。

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2021年11月14日 (日)

カナダ金貨の謎(有栖川有栖さん)を読んだ。火村英生の国名シリーズを含む短編集ですが。スマホ・タブレット・防犯カメラと今風なのがちょっとびっくり。トロッコ問題を題材にした作品も。

国名シリーズ、10作目ということでした。「7人の名探偵」でもう読んでいた船長が死んだ夜、から始まり、火村先生そんなに猫好きだったのか、というエアキャット、表題作のカナダ金貨の謎、火村と有栖が最初に大学で出会ったときのお話、あるトリックの蹉跌、そしてサンデル教授のトロッコ問題を題材にしたトロッコの行方、の5篇の短編集。

特になぜ殺害現場から消えた1枚のメープルリーフ金貨の謎を描いたカナダ金貨の謎が面白い。倒叙ですが、全部が最初から明らかになっているわけではないのが、火村さんがちょっとしたことを見つけてそれが謎の解明につながるのがいい。

トロッコの行方の動機も今どきだなあ、とか思った。そういや多くの作品でスマホ、タブレット、防犯カメラ、など現代のアイテムが出てくるのも有栖川さんの作品ではあんまりなかったのではないか、と新鮮に感じた。

 

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2021年11月 1日 (月)

「フーガはユーガ」(文庫版、伊坂幸太郎さん)を読んだ。ある能力を持った双子が不運にみまわれながらも強く生き邪悪なものに立ち向かうお話。単行本で読んでとても面白かったが、文庫版で結末を変えたかどうかをあとがきで伊坂さんが語っている。

1年のうち、誕生日だけ2時間に一回入れ替わり(体ごと)が起きる双子の常盤優我と風我。この役に立つのか立たないんだかの能力で話を膨らませて、伏線を散らばめて(最初の方の新幹線とかボーリングとか繋がるとは思わないよね)最後にいつもなら大団円になるのが伊坂さんの作品と思いますが、この作品は少し違いました。で、結末を単行本から変えるかどうかについても考えたとあとがきで書いてあります。どうなったかは単行本を読んだ人(私も)にも楽しめる作品だと思います。まあ一回読んでも何度読んでもめっちゃ面白いんですが。

あらすじは

「常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語りだす。双子の弟、風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、そして彼ら兄弟だけの誕生日に起きる不思議な「アレ」のこと。二人は大切な人々と出会い。その能力を武器に邪悪な存在に立ち向かおうとするが、、、」

というもの。語りだすけど最初から自分は「信頼できない語り手」だと宣言するのが面白い。

二人は強いんですが、次々と不幸が舞い込むのに目をそむけたく(ハルタくんとか特に)なる…

ただ最後には様々な伏線が一気に収束するが、、、今回は冒頭にも書いたように単純ではないです。

でも最後の章で救いがあると思いたい。単行本読んだ人にも再読お勧め。

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2021年10月24日 (日)

護られなかった者たちへ(中山七里さん)を読んだ。ラストで「え?あー!そうかー!」となって涙する、、、映画は原作とは違う話になっているそうです(文庫巻末で中山さんと瀬々監督との対談で)

これは犯人はすぐわかるのですが、犯人が誰か?が最後までわからない(ちょっと書いていて言っていることが変ですが、本当にそういう話です)のと、犯人がわかったとき、そして最後のタイトルの意味が分かる一文で泣ける、、、これは映画化したいというのもよくわかる(が、巻末の監督と中山さんの対談で、映画はちょっと変えているらしい。確かに重要人物がこの表紙の写真からもわかるように大幅に変わっている)。

あらすじは

「仙台市で他殺体が発見された。拘束したまま飢え苦しませ、餓死させるという残酷な殺人方法から、担当検事の笘篠は怨恨の線で捜査する。しかし被害者は人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で容疑者は一向に浮かばずにいた。捜査が暗礁に乗り上げる中、二体目の餓死死体が発見される。一方、事件の数日前に出所した模範囚の利根は、過去に起きたある出来事の関係者を探っていた。。。」

というもの。これを笘篠が阿部寛さん、利根を佐藤健さんが演じるならそりゃ観てみたい。映画も観に行こうと思います。

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2021年10月17日 (日)

名探偵の証明 密室館殺人事件(市川哲也さん)を読んだ。歌野さんの密室殺人ゲーム+流行りのデスゲームと思いきや!仕掛けはもう1ページ目から始まっていた。最近のミステリ作品について登場人物が語ってるのも面白い。

こういう探偵が追い込まれる作品は面白い作品が多い。名探偵に薔薇を、とかこの前作の名探偵の証明とか。

今回も一瞬デスゲーム作品と思いきや、実は、、、とメイントリック以外にもう一つ仕掛けがあって、、、というもの。

あらすじは

「気がつくと密室館と呼ばれる館の一室にいた日戸涼。ミステリ作家・拝島登美恵によって、涼を含む男女8名が監禁されたのだ。その中には若き名探偵、蜜柑花子の姿も。4日間のうちに、これから館内で起こる殺人のトリックを解明できれば開放する、と拝島は宣言した。果たして蜜柑花子はそのトリックを解き明かし、、、」

ということだけ聞くと、歌野晶午さんの密室殺人ゲームと流行りのデスゲームの組み合わせ?っぽいですが全然違いました。

しかもその謎だけでなく、もう一つ「名探偵の証明」にふさわしい仕込みが入っていたとは、、、

(なので清涼院流水のコズミック?みたいなところが出てきても納得)

あと最近のミステリ(氷菓とか体育館の殺人とか。鮎川哲也賞を去年とったけど売れなかったというのは???(前作?))

完結編の文庫版(名探偵の証明 蜜柑花子の栄光)も今月出るということなので楽しみだが、この感じでは蜜柑さんもまた追い込まれそう、、、

 

20211016-193922

 

 

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